ラテンアメリカの黒人をビジュアルで表現する方法

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ラテンアメリカの黒人による文化的貢献は、多岐にわたります。音楽で言えば、キューバのCelia Cruz。スポーツで言えば、ドミニカ共和国のMarileidy Paulino。政治で言えば、コロンビアのFrancia Márquez。祖国を離れた黒人に関する歴史/アーカイブスの発展で言えば、プエルトリコのArturo Schomburg。アフリカにルーツをもつさまざまな黒人たちが、世界の文化に影響を及ぼし続けています。ビジュアル文化に関して言えば、ブランドや企業の選ぶビジュアルでラテンアメリカ黒人をどのように登場させるかを考えるうえで、これらの貢献にしっかりと目を向けるべきです。ブランドや企業は、こうした影響力のあるコミュニティを認識して、その結果としてビジュアルを選択しているようです。これは、良い兆候です。自身をアフリカ系譜であると認識しているラテンアメリカ人は25%にのぼります1。そして、ゲッティイメージズのVisualGPSでは、ラテンアメリカ人の人気ビジュアルの26%は黒人が登場するものになっています。

ただし、現実に即した正しいビジュアルの在り方が、黒人のこうした認識率と登場率の一致だけに終始してはいけません。複数の国では、人種に関する個人情報を集めて分析することが法律に定められています2。そのため、自分たちの直面する困難を認識してくれている企業を評価するというラテンアメリカ人が85%にのぼるというVisualGPSの調査結果も、驚きではありません。このことからも、“どれだけの人 ”をビジュアルで起用するかということと同じくらい、“どのように”ビジュアルで起用するかということも重要であることがわかります。 

人気のビジュアルにおける黒人の割合とアフリカ系譜であると自認する割合がラテンアメリカで一致しているものの、企業やブランドのビジュアル表現は黒人の体験に特化しない傾向にあり、黒人の登場する人気ビジュアルの60%は、複数の人種の集団のなかで黒人を描いた内容であることが、VisualGPSで明らかになっています。黒人の登場するビジュアルのうち、過去10年間でとくに人気の高いものへ目を向けてみると、人種的多様性に対するこうした嗜好は一貫しており、それに起因して、大きな人口割合を占める黒人層の生活にスポットライトを当てる機会をブランドや企業は逃しています。

あらゆるタイプの黒人がビジュアルに登場するようにしていくうえで、LGBTQIA+のラテンアメリカ黒人がブランドや企業の判断指針になりうることがVisualGPSによって判明しています。LGBTQIA+のビジュアルに登場する黒人は、白人の2倍以上となっているのです。そして黒人が登場する場合は、共感できる内容であると同時に、ほかの黒人と一緒にコミュニティの一員であることを強調する内容で生活を楽しんでいるLGBTQIA+のラテンアメリカ黒人として描かれます。たとえば、LGBTQIA+のラテンアメリカ黒人が登場する人気ビジュアルの75%は生活様式に関連するものです。これに対して、LGBTQIA+に限定しない全ラテンアメリカ黒人が登場する人気ビジュアルを対象にした場合、その割合は52%になります。現実に即したビジュアルを重要視するラテンアメリカ人が98%にのぼることを考えると、黒人のリアルな生活模様をこのように優先して伝えることは、とりわけタイムリーであると言えます。 

黒人の好ましいビジュアル表現として複数の人種を起用したビジュアルに依存する状態から脱却するためには、より黒人に特定して黒人の生活を正しく表していかなければなりません。LGBTQIA+の黒人コミュニティというアイデアを念頭におきつつ、コミュニティにおける黒人に特定したビジュアルを優先していく場合、その内容は状況によって異なるものになる可能性があります。とはいえ、友人や家族と日常生活を送っている人たちのビジュアルを使うところから始めてみるといいでしょう。一緒に食事をする場面、一緒に仕事をする場面、公園を散歩する場面などです。一緒に踊っている場面もいいかもしれません。ラテンアメリカ黒人のこうした場面に着目することで、これまでメディアで正しく描かれてこなかった人たちの本来の姿を映し出すことができるはずです。 

Samuel Malave Jr
クリエイティブインサイトマネージャー
ブロンクスで生まれ育った誇り高きヌヨリカン。ブランド戦略に根ざした専門知識は、広告代理店や人気の音楽ストリーミングサービスなどで、ブランドと顧客のつながりを強めるための支援でキャリアを積みながら培われたもの。現在は、クリエイティブインサイトチームのマネージャーとして、「世界を動かす」というゲッティイメージズのミッションをサポートしている。仕事以外の時間では、愛する人たちのポートレート撮影や、SF/ファンタジーのシリーズ読破に勤しんでいる。

出典

[1] World Bank Group   
[2] International Service for Human Rights 

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