どちらが大切?人間の技巧とAIの可能性(2026年)

目次

ビジュアル業界で大きな亀裂を目の当たりにすることになった2025年。その流れは、2026年も継続しそうです。生成AIのコンテンツによって社会の様相が切り替わっていくなか、ブランドや企業が熱心だったのは、どのような姿勢をとるのかを示すことでした。大規模な広告キャンペーンにおいて非公開で使用された生成AIに対する反発が起こる一方、“AI不使用”を広告の中核メッセージとして誇らしげに掲げるPolaroidのようなブランドが現れるなど1、コンテンツの世界はますます二極化され、消費者はその中間に置かれることが多くなっています。

誰もが生成AIに対する意見をもつ現在

ゲッティイメージズによるVisualGPSの検索データでは、2025年にもっとも検索されたキーワードが引き続き“AI”であることが示され、概念的にも実務的にもAIのビジュアルをブランドや企業の情報発信に組み込む必要は今後もなくなりそうにありません。 以下のようにVisualGPSの調査では、生成AIのもたらすチャンスという点と、業界と消費者による創造性の価値の位置づけという点のあいだで、現在、世界が引き裂かれていることが確認されています。

  • 多くの地域にわたる世界中の消費者の66%が、AIテクノロジーでアートやビジュアルを作成できることを刺激的にとらえている。
  • ただし、“リアル”で正真正銘のビジュアルを広告で目にすることが、全地域でもっとも好まれている。大多数の人は、変更処理のされていないリアルなビジュアルを使用するブランド/企業を好んでいる。
  • 世界の消費者の66%は、人間の手間のみによって創作されたコンテンツはAIで生成されたコンテンツより高く評価されるべきだと考えている。

鮮烈な新しい美的感覚を生み出すこともあれば、拙劣で雑なものを生み出すこともある生成AIですが、ビジュアルで本当に共感する部分が人間的なものであることは、頑として変わりません。それは、誠実さ、共感、質感であり、本当のストーリーが描かれていると感じさせるすべての視覚的要素です。写真を撮るということは頭と目と心を一致させることだという有名な言葉を、Henri Cartier Bressonは残しています。写真は、意識と共感を組み合わせる行為です。生成AIはこれを再現できるでしょうか? 適切なプロンプトとアイデアがあれば可能かもしれません。ただし、少なくとも現在においては、消費者がそれを正真正銘のものだと認識することはないでしょう。ゲッティイメージズの最新ビジュアルテストでは、生成AIによるコンテンツだと明かされた場合に、視覚の認識が変化することが示されています。生成AIの使用が確認されると、見る人にとってビジュアルの魅力が低下することが多いのです。さらに重要なのは、AIで生成されたビジュアルについては、AI由来であるため“正真正銘のもの”だと考えられないという消費者が世界で78%にのぼっていることです。

AIで生成されたキャンペーンに対する反発を2025年にメディアの見出しで見かけたのは、おそらくこのためです。ゲームの世界にさえも二極化の例があります。独特な物語とアートディレクションによってファンや批評家に強い印象を与えた2025年の年間最優秀ゲーム『Clair Obscur: Expedition 33』です。同作は超大作映画のような様相と雰囲気でありながら(約1000万米ドルという低予算)2、生成AIの使用と予想を超えるその迫力が議論を醸すことになりました3

創造する機械と創造的な人間

正真正銘であることをめぐる議論では、生成AIによる制作についてというより、むしろ、その意図をめぐる混乱が話題になります。生成AIの使用は意図的に行う必要があります。創造の効率は高まりますが、それによって、ブランドや企業のDNAや壮大なアイデアが犠牲になるべきではありません。そのため、生成AIを取り入れるにあたっては良いマナーを心がけましょう、ということになります。付加的な道具として生成AIを位置づけて、生成されたものであることを明示しましょう。分類し、必要な同意を得て、必要なクレジットを表示し、つねに人間の創造性を最優先にします。 

ビジュアル表現は、ミクロとマクロの両方の要因によって、2026年もこれまでどおりに変化し続けるでしょう。ただし、重要な価値、つまり、信頼、技巧、意義が万国共通であることに変わりなく、なくなることはありません。大切なのは、対立姿勢をとることではありません。生成AIによる創造面のチャンスと、技巧と意義をつうじて信頼を築くビジュアルとのバランスをとることが大切なのです。

Sandra Michalska
クリエイティブインサイトマネージャー
ゲッティイメージズとiStockのEMEA地域クリエイティブインサイトリサーチャー。フランス語圏市場を中心に、リサーチャーやアートディレクターで構成される部門横断的な国際チームと業務を行う。ブランド戦略と視覚文化に根ざした専門知識は、パリの広告代理店とデザイン事務所でキャリアを積みながら培われたもの。2020年からはクリエイティブインサイトチームに所属し、ブランドのビジュアル戦略を支援している。熱心な映画ファン。仕事以外では、映画館、美術館、モータースポーツといった場所で彼女の姿を見ることができる。

出典
[1] Polaroid Newsroom
[2]  EL PAÍS
[3] Engadget

関連記事

2026年のアジア太平洋地域を形作る主要テーマ › Feb 9, 2026 2026年にアジア太平洋地域を形作るビジュアルトレンド (人工知能、真正性、持続可能性) に関するキュレーターのガイドをご紹介します。
注目コンテンツ
UAE:2026年=家族の年 › Jan 30, 2026 地域のクリエイティブ関連コミュニティのコンテンツ制作をサポートする教育/コミュニティの取り組みとして、UAEの家族生活をドバイで撮影したイベント『Create by Getty Images』。UAEの人たちのアイデンティティと価値観に対する家族の強い絆の大切さがあらためて示されています。
注目コンテンツ
暮らしに根付くスポーツ:コミュニティを築く動き › Jan 22, 2026 年齢、多様性、女性を主役にする考えなど、現在の消費者の需要に直接応えたビジュアルがこちら。単なるトレンド描写を超えて、実生活に根付いた様子を伝える機能と文化的価値をもつスポーツに迫ります。